統合失調症
統合失調症は「思考」「行動」「感情」をまとめることが難しくなるために、幻覚や妄想などの症状が起こる脳の病気です。
発症の原因はいまだに分かっていません。様々な要因が複雑に絡み合って発症する病気ですので、育て方が原因で病気になるわけではありません。
発症年齢は思春期~40歳が大半を占め、発症率に明らかな性差はみられません。100人に1人弱がかかるといわれており、けして稀な病気ではありません。
症状について
症状は陽性症状と陰性症状に分けられます。
初期や急性期は陽性症状が主体であり、慢性期になると徐々に陰性症状が主体となります。
陽性症状
健康な時にはなかった状態が現れます。本来「ない」はずのものが「ある(出現する)」という捉え方になります。
代表的なものは、幻覚と妄想です。
幻覚とは、実際にはない刺激を知覚することをいいます。聴覚で知覚した場合を幻聴と呼び、視覚で知覚した場合を幻視、触覚で知覚した場合を体感幻覚と呼びます。統合失調症では、幻覚の中でも幻聴が現れやすいです。
幻聴の多くは人の声が聴こえてくるという幻声です。内容は、悪口、批判、命令など悪意のあるものが多いです。具体的には、「死ね」「生きている価値がない」「殺すぞ」「このままだと家族がどうなるかわからないぞ」など、自分の存在を否定して追い詰めるような声が本人には聞こえています。病状が悪い時には幻聴も活発になり、恐怖感が切迫すると混乱、興奮、自殺企図が生じます。
あり得ないことを確信し訂正不能な考え(信念)のことを妄想といいます。
些細な出来事がすべて自分に関係していると確信する関係妄想、危害を加えられると確信する被害妄想、監視されているという注察妄想などが出現します。食事や薬に毒が入っているという被毒妄想によって、食事が摂れなくなってしまうこともあります。
幻聴の場合と同様に、自分をおびやかす考えであることが多く、「誰かが自分を付け回している、見張っている、殺そうとしている、狙っている」などの訴えが典型的です。
陰性症状
あったものが低下してしまう症状です。長期経過の意味を込めて、残遺症状と呼ぶこともあります。
意欲の低下、感情鈍麻、注意や集中力の低下、ひきこもり等がみられます。
治療について
陽性症状による恐怖感や混乱が強く自宅での療養が難しい場合は、早急な入院治療が必要になります。入院が必要な場合は、近隣の医療機関をご紹介します。
外来治療でも入院治療でも、治療の土台は抗精神病薬を中心とした薬物療法の継続です。精神療法をはじめとした心理サポートも不可欠です。
薬物療法により、症状はある程度落ち着くようになりますが、再発防止のためにお薬を飲み続けることが必要となります。再発の多くは、薬を飲まなくなること(拒薬)や飲み忘れが増えること(怠薬)で生じます。
精神疾患に対する社会の偏見はまだまだ強いです。本人自身が「病気である」ことを受け入れることにも時間を要しますし、苦悩も深いはずです。そのため、「自分は病気ではない」「薬を飲んでいる限りは病気が治ったと言えない」という思いから通院や内服を中止し、再発する方もいらっしゃいます。
もちろん再発のリスクは、拒薬や怠薬だけではありません。何の誘因もなく再発することもありますし、環境変化などのストレス因子がきっかけで不調になり再発することもあります。
統合失調症は、長い年月で見ていかざるを得ない病気であります。だからこそ、本人及びご家族との関係性を大事にしたいと考えております。
通院負担軽減のための自立支援医療制度の利用や、生活支援のための社会福祉資源(就労支援や生活支援)の活用も大事です。病状によっては、障害年金の適応になります。
各種支援の情報を入手し活用することも大切になります。