うつ病

うつ病でみられる気分の落ち込み

誰にでも、気分がよい日や気分がすぐれない日があると思います。どうしてもやる気が出ない日もあると思います。うれしいことがあれば気分が晴れやかになるでしょうし、悲しいことがあれば気分が沈むのも自然なことです。

うつ病で見られる気分の落ち込みは健康な時におこる気分の沈みとくらべると、1)程度が強い(楽しいことや嬉しいことがあっても気分が持ち上がらない)、2)持続期間が長い(診断基準では、1日中そして2週間以上続くと規定されています)、3)症状により日常生活に障害が出る(就労・家事・就学が困難になる)ことに特徴があります。

症状について

うつ病では、憂うつな気分や意欲の低下という精神症状だけでなく、食欲低下、倦怠感、頭痛、めまい、動悸、胃痛、など多彩な身体の症状も出現します。そのため、身体の病気を疑って最初は内科を受診し、検査をしても異常が見つからず、精神科・心療内科の受診を決意される方も多いです。

基本症状

「抑うつ気分」と「興味・関心・喜びの喪失」の2つが基本症状となります。
抑うつ気分は、「気分が落ち込む」「気が滅入る」「憂うつ」「むなしい」「悲しい」といった言葉で表現されます。外からわかる症状として、表情が暗い、うつむきがちな姿勢、涙もろさ、力のない口調があげられます。
興味・関心・喜びの喪失により、もともと好きだったことにも興味が持てず楽しめなくなったり、新聞・テレビ・ネットなどに対しても興味が薄れてしまいます。

基本症状以外の症状

・体重あるいは食欲の変化
・睡眠の変化
・焦りや落ち着きのなさ(焦燥)、頭が働かず考えや行動が出てきにくい(抑制)
・疲労感または気力の減退
・無価値観(自己評価が下がる)あるいは自責感(役に立たず申し訳ない)
・考えがまとまらない(思考力低下)あるいは決断困難(些細なことでも決められない)
・自殺念慮(「この世にいない方がよい」等と気持ちが行き詰まり死ぬことを考える)

原因と頻度

うつ病はまれな病気ではありません。誰でもかかる可能性があります。厚生労働省の調査では、日本の生涯有病率は6.7%であり、15人に1人がうつ病を経験している計算になります。また、女性は男性の約2倍、うつ病になりやすいといわれています。

原因ははっきりとは分かっておりませんが、さまざまな研究によって「うつ病を引き起こす原因はひとつではない」ことがいわれています。環境因子・遺伝的要因・身体疾患・女性ホルモンの変化・性格傾向などさまざまな要因が結びついて、うつ病を発症します。

治療について

休養・薬物療法・精神療法が治療の3本柱となります。
軽症であれば、仕事や学校を休まずに済みますが、多くの場合はまとまった休みを取り、しっかり休養することが必要になります。自宅で効果的な療養ができない方には入院治療をおすすめする場合があります。


薬物療法では抗うつ薬を使用しますが、薬の効果が出始めるまでに2週間程度かかります。薬の種類によって副作用はさまざまですが、共通する副作用としては「頭がぼーっとする」「眠気がある」「ふらつき」があります。
一般的によく用いられるSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)では、内服開始後1週間程度「むかむかする」などの消化器症状や頭痛が出現することがあります。内服開始後しばらくは副作用ばかりを感じて不安になる方もいるかもしれません。効果と副作用を確認しながら、2~4週間毎に薬の量を調節していきます。

うつ病は再発しやすい病気です。早期に抗うつ薬を中止・減量することは再燃(回復する前に再発する)リスクを高めます。基本的には、症状改善後6か月はお薬を減らさずに経過を見るのが安全だと言われています(継続療法)。再発を繰り返している方に対しては、1~3年の維持療法での再発予防効果が報告されています。


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