漢方薬の副作用 ①甘草(かんぞう)
当院では、漢方薬の処方も行っております。
漢方薬は自然のものだから安心と考える方もいらっしゃいますが、お薬であることには変わりませんので、副作用もあります。
漢方薬を飲み始めて、むくみ、発疹、かゆみ、下痢、食欲低下などが出現した場合は、副作用の可能があります。いつもと異なる体調の変化を感じた場合も副作用を疑う必要があります。そのような場合は、服用を中止して、診察の際に主治医にご報告下さい。
注意を要する生薬として、今回は甘草(かんぞう)をとりあげます。
甘草の1日総量に注意して下さい
甘草には幅広い効能があり、医療用漢方製剤の約7割に含まれています。
従って、複数の医療機関を受診し、数種の漢方薬を併用している場合、甘草の総量が多くなってしまう可能があります。お薬手帳を持参するなどして、内服している漢方薬を主治医や薬剤師に伝えるようにしてください。
一般的には、甘草の摂取過多、長期服用、高齢者、女性で副作用の発現頻度が高くなることが知られています。
副作用の症状
- むくみ(浮腫)
- 血圧の上昇(高血圧)
- 手足に力が入らない など
偽(ぎ)アルドステロン症
アルドステロンは副腎から分泌され、体内に塩分と水をためこみ、カリウムの排泄を促して血圧を上昇させるホルモンです。このホルモンが過剰に分泌された結果、高血圧、浮腫(むくみ)、低カリウムなどが起きる病気を「アルドステロン症」といいます。
「偽アルドステロン症」とは、アルドステロンが増えていないのに、「アルドステロン症」の症状を示す病態です。
甘草の主成分であるグリチルリチン酸の作用によって、腎尿細管において、ナトリウムの再吸収とカリウムの排泄促進が生じます。体内に塩分と水がたまり、カリウムは失われます。カリウムの喪失(低カリウム血症)が高度になると、脱力症状や不整脈が生じます。ナトリウムと水がたまりすぎると、むくみ(浮腫)、体重増加、血圧の上昇が起ります。
副作用が疑われるとき
「むくみ」や「血圧の上昇」に気がついた場合は、すぐに漢方薬を中止して、必ず受診するようにしてください。
グリチルリチン酸の効果は、一般的に数ヶ月持続すると考えられています。原因となった薬剤を中止した後も、しばらくの間、高血圧や低カリウム血症が続く場合もありますが、いずれ改善します。
早期発見のために必要な検査
特に自覚症状がなくても、血液検査によって低カリウム血症を発見されて、偽アルドステロン症の診断に至る場合もあります。
甘草を含む漢方薬を内服している場合は、血液検査による血清カリウム値のチェックが重要となります。
甘草を比較的多量に含む方剤の例
一日量が2.5gを超える方剤の例です。
複数の医療機関を受診している場合には、お薬手帳を持参するなどして、内服している漢方薬を主治医や薬剤師に伝えるようにしてください。
- 芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)
- 甘麦大棗湯(かんばくだいそうとう)
- 小青竜湯(しょうせいりゅうとう)
- 人参湯(にんじんとう)
- 半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう) など