漢方薬での治療 ①気の異常

メンタルクリニックを受診したものの、西洋薬を飲むのは抵抗があるという方も多くいらっしゃいます。
当院では、ストレスによる心身の不調に対して漢方薬の処方も行っております。
しかし、統合失調症や双極性障害を始めとして、漢方薬だけでは治療が難しい精神科の病気もございます。そのような場合は、西洋薬での治療を提案いたします。

このコラムでは、「気・血・水」の考え方と、気の異常について説明します。

気血水とは

東洋医学では、不調の原因を「気」「血」「水」の乱れと考えます。

「気」は身体をめぐる作用で目にみえないもの、「血」は身体をめぐる目でみえるものであるとされていました。さらに「血」は、赤色の「血」と無色の「水」に分けられ、「気」「血」「水」と一組になって呼ばれるようなって呼ばれるようになりました。
まずは下記のようにざっくりとイメージしてもらえればと思います。

気:心身の活力、生命エネルギーのようなもの
血:血液とその動き
水:体液とその動き

気も血も水も、順調にバランスよくめぐっていることが重要です。
「気」「血」「水」の流れに異常が生じ、量が不足したり、流れが滞ったりすると、不調が生じるのです。

気の異常

次の3パターンに分けられます。
1)気の滞り
2)気の逆上
3)気の不足(気虚)

気の滞り

「気」のめぐりが悪くなって、停滞している状態です。
「気鬱(気うつ)」や「気滞」があげられます。気持ちが沈んでうつ的な症状を示すものと、目に見えないものの停滞感・閉塞感として現れるものとがあります。ただし、東洋医学の「気鬱」は、西洋医学の「鬱病」と同義語ではありませんので、ご注意下さい。

「心配事で胸が詰まる」という表現があるように、気が滞りやすい場所は、「胸部」「心下部」「腹部」になります。
「のどがつかえた感じ」「胸が詰まった感じ」という表現が使われることも多いです。
治療としては、「理気薬」という気の流れをよくする漢方薬を選択します。

※理気薬の例:半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)

気の逆上

「気逆(きぎゃく)」という、一方的に下から上に向かって「気」が上衡(逆上)する状態です。
気が下から上に逆上するので、足もとの気は減って、頭部には気が充満してしまいます。「冷えのぼせ」と呼ばれ、足は冷えて、頭はのぼせ、めまいや動悸を伴うこともあります。
のぼった気を降ろす「降気薬」が使用されます。

※降気薬の例:苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)

気虚

「気」の量が不足して、種々の機能が弱まり、元気のなくなった状態です。
「疲れやすい」「だるい」「食後に眠くなる」「目に力がない」などの症状が出現します。気虚には、「食欲がない」などの消化器症を伴います。
気虚に対する治療には、「補気薬」が用いられます。

※補気薬の例:補中益気湯(ほちゅうえっきとう)

参考

「血」の異常、「水」の異常については、こちらのコラムをご覧ください。