うつ病の療養 ⑤再発を防ぐために

回復後も治療の継続が大切です

「症状はよくなったけれど、いつまで治療を続ければいいのか」と、疑問に思う方もいると思います。
忙しくて病院に行きそびれたり、薬の飲み忘れもでてくるかもしれません。約束の日に受診できなかったことが続くと、主治医を受診するのが気まずくなって、そのまま治療を中断してしまったという話もお聞きします。

うつ病は繰り返しやすく、再発を繰り返すごとに、さらに再発しやすくなるという性質をもっています。症状が改善したあとも、しばらく抗うつ薬による治療を継続したほうが、抗うつ薬を継続しなかった場合にくらべて、再発が少ないといわれています。
そのため、お薬を減らすタイミング、治療を終了するタイミングは、とても重要です。
症状が完全にとれてから、半年程は治療を継続するのが一般的です。これを「継続療法」といいます。

維持療法

再発を防ぐ目的で、継続療法後もさらに長期にわたって薬物療法を継続することを、「維持療法」と呼びます。
再発の回数が多い方、重度のうつ症状の既往がある方に行います。

お薬は徐々に減らしていきます

抗うつ薬を中止するときには、徐々に薬の量を減らしていくのが一般的です。飲んでいる抗うつ薬をいっぺんにやめてしまうと、頭痛、めまい、不安などの症状が出現することがあるためです。

生活の様子や体調の変化を確認しながら、お薬を徐々に減らして、治療を終了するタイミングを相談していきます。

復帰後数ヶ月は無理をしないことが大切です

復帰したばかりの頃は、出社するだけでも疲れます。遅れを取り戻そうと、最初からエンジン全開でスタートしてしまうと、途中でバテてしまいます。

数ヶ月経つと、生活リズムに慣れてきて、体調も少しずつ落ち着いてきます。「もう大丈夫。迷惑かけたので取り戻したい。」と焦りやすい時期が続きますが、復帰して3~4ヶ月目が再燃しやすい時期です。
油断していると、疲れがたまって調子を崩すこともあるので、体調の変化には注意が必要です。
不調のサインに気づいた時は、「無理せずに早めに寝る」「信頼できる人や主治医に相談する」「自分なりのリラックス方法実践する」など、対策を取ることが大事です。

そのためには、不調のサインにはどのような症状があるかを知っておくことも大切です。うつ病の再発のサインは、うつ病を発症した時の症状と同じです。不調のサインは人によって異なりますが、一般的には、「眠りが悪い」「疲れやすい」「食欲が減った」「イライラしやすい」「落ち込みや不安」があげられます。

治療の途中で診断が変わることもあります

治療開始当初はうつ病の基準にあてはまっていても、経過中に新たな症状や病態が出現することで、診断が変わることがありうるからです。
とくに、うつ病から双極性障害(躁うつ病)に診断が変更になることが、うつ病の15%程度に生じると報告されています。

双極性障害では、そう状態よりもうつ状態の期間が長く、出現頻度も多いです。そう状態の既往もしくは新たなそう状態の出現が確認されて初めて双極性障害の確定診断がつきます。そのため、うつ病エピソードから発症した場合はうつ病と診断され、そう状態の出現により双極性障害に診断が変更になることも多いのが実情です。実際、半数以上の方がうつ病エピソードから発症すると言われています。

双極性障害に診断が変更になった場合は、治療薬の主剤を「抗うつ薬」から「気分安定薬」に変更する必要があります。

双極性障害(躁うつ病)について